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〔症例10〕
家族へのよりよい関わりは
平塚共済病院長瀬
●71歳、女性、膵臓癌
経過
平成8年3月、胸苦・左季肋部痛・食欲低下・体重減少あり受診。CT上、肝〜膵臓に腫瘍あり、神経・血管のメタ疑いにて入院。
入院期間3月18日〜現在入院中
病名認知本人へは、慢性膵炎、家族へは、膵臓癌
入院時主訴左季肋部痛
入院中主訴倦怠感・足のだるさ・腰痛、背部痛
家族背景ファミリートリー(略)。夫は8月より付き添う。15時より20時まで自宅へ帰り、その間、娘が交替に来ている。
3月「一日中気持ち悪い」、4月「ここに来てからこんなに体重減って、ちっともよくならない」、6月「痛くない」、7月「眠くって仕方ない」という訴えが聞かれていた。アンペック・ホリゾンにて疼痛コントロールされているも、副作用により傾眠傾向。ケシテラの副作用も大きなものはなく、状態も安定していたため外出・外泊を勧め、家族を含めた看護をしていった。個室へ移動後は、家族は交替で患者の側に付き添いをしており、夜間のPトイレ移動や体交の介助を行っている。長期に付き添っていることで、やや身体的・精神的に苦痛になるようだが、患者もサポートしていた。患者の状態は、一進一退を繰り返している。そんな患者の状態をみて家族は、少しでもよくなる方法を考え、勉強され、丸山ワクチン療法を試みたいと希望を言ってきた。前向きに残りの人生を少しでも安楽にできるようにしたいという、家族のやさしさを感じることができた。それに対し私たちも、患者・家族の気持ちに添えるよう援助していった。
1O月末より全身浮腫増強、R苦ありO2開始。疼痛訴えほとんどなく、傾眠がちとなり、つじつまの合わないこと多く訴え、夜間はとんど眠らず、夫が疲労してきた。
その頃の本人の訴え・夫の言動・様子、看護婦の考察を整理した。
そして、レベルダウンに対し、家族の動揺強く、娘が泣いてしまうこともあった。現状を認めたくない家族の気持ちと、入院生活と付き添いが長いことによる家族の身体的疲労に対し、家族の言葉に耳を傾け、訴えや気持ちをぶつけられる場をつくるように配慮した。そして、少しでもAさんらしく生きられるよう援助するとともに、残された時間を少しでも家族と一緒に着られるよう、。有意義な時間を過ごせるようにしていった。
看護計画
1.家族と話のできる時間をつくる。2.訴えのある時は、ゆっくり聞く。3.訪室時、必ずいたわりの言葉をかける。4.家族が介助している時は、声がけとともに手伝うこと。NSだけで行わず、家族とともに行うこと。5.夜間、家族が休めるよう声かけをするとともに、本人訴え時コールしてもらい、ナースが介助していくようにする。6.本人へ何かあれば遠慮なくコールするよう指導する。また、夜間時に家族を起こさずナースを呼ぶように話す。7.家族へ、体交やPトイレ移動など、ナースコールを押して、ナースと共にするよう指導。また、遠慮せずナースを呼ぶように話す。
ナースが援助をしやすいように医師がサポート
Wendy 私たちのほうでも何かさせていただこうと思うのだけれども、家族の側がなんとか自分たちでやり遂げようと思ってしまうケースもよくあるのではないかと思います。こうなりますと私たちはなんとなく締め出されてしまったような気にもなってしまって、自分たちが無力なのではないか、十分にケアできていないのではないかというような気持ちになってしまい、自分たち自身痛みを感じてしまう。
「私たちのほうでいろいろサポートしますよ」と家族に申し出て、少し介護から離れて休みを取れるように配慮をしてあげる申し出もした上で、それでも家族がずっとやりたいという場合には、それはもうその家族がそういう形で死ぬまで自分たちの家族の大事なメンバーである患者さんをみたい、そうしなければ気がすまないのだということですからそれはそれで仕方がないかもしれないと思うのです。

 

 

 

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